CGはもう少しお金をかけて欲しかったと思うのですが…、ホラーとしては怖かった!
本作の概要
あらすじ
小さい頃から外見に強いコンプレックスを持ち、人気タレントのメイクを担当しているイェジ。タレントからは罵倒され、ふとした偶然で出演したTV番組では、自分への悪意ある書き込みで自暴自棄に。そしてある日、巷で噂になっている“整形水”がイェジの元へ届けられた。顔を浸せば、自らの手で自由自在に思い通りの容姿へと変えることができてしまう奇跡の水。後遺症も副作用もない。美しくなりたいという欲望に駆られ、イェジは“整形水”を試すことを決意する。
公式ホームページより
原作はLINEマンガで配信中のマンガ『奇々怪々』。
この『奇々怪々』は「グローバルでの累計閲覧数は31億回を超え、韓国「NAVERWEBTOON」サービス内での評価は10点満点中9.9点を獲得する人気作」(公式ホームページ)。
ワタクシ、韓国のウェブトゥーンというものをよく知りませんでした。今、世界的に人気があるんですね…。
ウェブトゥーン…スマートデバイスでの閲覧に適した、上から下に読み進める縦スクロール形式でのカラーのデジタルコミック。(パンフレット)
韓国「NAVERWEBTOON」でサービスが始まったデジタルコミック形式で、そのウェブトゥーン作品を日本で独占配信しているのがLINEマンガ。その中でも大きな人気を博しているのがオムニバス形式のサイコホラー作品『奇々怪々』、韓国NAVERWEBTOONで連載が始まったのは2013年5月8日、作者はオ・ソンデ氏。
本作はその中のエピソード『整形水』をアニメ化したもの。監督はこれが初の長編アニメーション監督となるチョ・ギョンフン氏。最初はプロデューサーとして制作に関わっていたが、誰も監督を引き受ける人がいなかったため自身が監督を務めることになってしまったのだとか。
韓国では2020年9月に公開。第46回ボストン・サイエンスフィクション映画祭 最高アニメーション賞 受賞。
おおまかな感想
映画の演出としてそれはどうなの!
セルルックの3DCGアニメなのですが…、CGそのものはそんなにお金をかけてないという印象。キャラのアクションはいかにもCG然としたフワンフワンとした動きだったり、激しいアクション場面になるとマンガの集中線のようなフラッシュが出てきたり。あんまりアニメ映画の効果としては見た事のない演出ですが、美麗なCGによる画面への没入感というものを期待する映画ではない、というわけなのでしょうか…。
しかし、作画は良かったです。場面の説得力を十分に感じられましたし、キャラクターのデザインは非常に日本風なキャラクター。ここのCGモデルの造形はかなり緻密ですごく馴染みやすい。
メタモルフォシスの恐怖
ホラー映画としても怖い。海外のホラーの『蠅男の恐怖』とか、日本のホラー漫画でもヘビとかネコとかカエルとか…、変身の恐怖を描いた作品は数多い。
ただこの『整形水』は、人間の身体そのものの変身や喪失を通して「人間の条件」を浮き彫りにする、より本能的で本質的な怖さに直結する内容になっている。
最近の日本の漫画だと、『メイドインアビス』。あの作品に出てくる「変身」の直接的な恐怖感にちょっと似ているものがあるように思いました。
メイドインアビス(1)(バンブーコミックス)
つくしあきひと著 竹書房刊
このキャラの見た目ながら、内容は恐ろしくシビアで容赦がない。
ホラー漫画ではないですけど、人間が壊れていくという恐怖感が表現されている点は、『整形水』と相通ずるものがあります。
原作からのアレンジ
原作を読んでから映画本編を見ました。
原作の主人公(LINEマンガの原作では半田恵美)は本当にどうしようもない人間でしたが、映画版でも基本的にその設定に変更はありません。ただし、主人公の職業がメイクアップアーティストになっている等、主人公の心情や設定の掘り下げがより深くなっている。そのため、作品としての奥行きも増している。
映画化する上でのアレンジとしてはごく標準的だとは思うのですが、どうせだったらもっと大胆に、主人公の印象がまるっきり変わるぐらいの思い切ったアレンジをしても良かったのではないか…と、見終わって感じました。そういったポテンシャルとか拡がりを感じる作品ではありました。
しかし、ホラーとしては非常に怖い、怖い良い作品。チョ・ギョンフン監督はこの作品が初監督らしいですが、上手くバランスをとったのだと思います。
声優さん
日本語吹替に出演している声優さんは沢城みゆきさん、諏訪部順一さん、上坂すみれさん、日野聡さん…、実力派の有名声優さんばかりなので、その演技は言わずもがな。
ややCGはお金をかけて欲しかったと思うものの、ホラーとしては怖い。シナリオもしっかりしていて、キーとなる伏線でテーマも際立たせている。
B級ホラー映画なのでしょうけど、造りはしっかりしていている、なので気楽に見れる。
夏は終わってしまいましたが残暑続く昨今ですので、ホラーの涼をもとめて映画館に行かれるも良しなのではないでしょうか。
映画『整形水』 | |
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監督 | チョ・ギョンフン |
原作 | オ・ソンデ (LINEマンガ『奇々怪々』内「整形水」) |
脚本 | イ・ハンビン |
出演 | 沢城みゆき 諏訪部順一 上坂すみれ 日野聡 たかはし智秋 杉村理加 根本泰彦 |
配給 | トムス・エンタテインメント/エスピーオー |
上映時間 | 約1時間25分 |
本編上映時間 | 約1時間21分 |
クレジット上映時間 | 約4分 |
ポストクレジットシーン | 無し |