
文責:ミズ・レモン

東京、上野の森美術館で開催中の『五大浮世絵師展—歌麿 写楽 北斎 広重 国芳』に行ってきました!
ワタシ、本物の浮世絵は見たことも無く…興味をそそられて行ったのですが、ウィークデイのお昼前という時間帯であったにもかかわらず、場内はお客さんがいっぱい。
なんだか熱気というものを感じました。
館内は写真撮影禁止、撮影許可マークのある絵だけ撮影可でした。音声ガイドが無料で聴けるのが良かった(ナビゲーターは歌舞伎俳優の尾上松也さん)。スマホで音声ガイドのサイトにアクセスすると聞ける。イヤホンを用意していきましょう。
ふつうは¥1000ぐらいかかりますし、お得。浮世絵理解の助けになりました。


本展は、女性を優麗に描いた喜多川歌麿、劇的な役者絵で人気を博した東洲斎写楽、風景・花鳥・人物と森羅万象を独自に表現した葛飾北斎、名所絵を中心に浮世絵に新風を吹き込んだ歌川広重、そのユーモラスな画風で大いに存在感を発揮した歌川国芳。美人画、役者絵、風景画など各分野で浮世絵の頂点を極めた5人の絵師の代表作を中心に約140点を紹介します。江戸時代を彩った浮世絵五大スターの競演をお楽しみください。
公式ホームページ「本展のみどころ」より
今、NHKの大河ドラマで蔦谷重三郎が話題とはいえ、やっぱり浮世絵というものは人々の興味を引き付ける、日本の人達の心に刻みつけられた何かを呼び起こすのだろうか…とも思いました。
というのも、ホンモノの浮世絵の迫力、その存在感、多彩さ、パワーは何とも言えない、これが日本の文化なのだという説得力がありました。

筆で描かれたものを木版画にしているからなのでしょうか、描線は実に細く、無駄は省かれシンプルで繊細。デッサンなどもかなりデフォルメされている。
しかし…、すんごい印象に残ったのは、東洲斎写楽の『大童山土俵入』という浮世絵。
大童山はめっちゃカワイイ。

実際の浮世絵は三枚組のワイドサイズで、大童山の左右に土俵入りを眺める谷風、雷電などのレジェンド力士が描かれている。
実はこの大童山、「数え年七歳で七十二キロ超肥満の怪童」(図録) だったのだとか。「相撲は取らず谷風らの取り組みの前座ショーを務めた。化粧まわしを付けた大童山は小さいが子供横綱として堂々とし、華麗で可愛く、ショーは大人気だったという。」(図録)
道理で、このまるっこさ。ぷくぷく具合。おててがちぎりパンのようになっているのも表現されている。
ちびっ子力士の可愛らしさと同時に規格外の巨漢である力強さは存分に伝わって来る。
ああ、これが「大首絵」に代表される、人物の個性・特徴を的確に表現するという写楽の特徴なのか…と納得させられました。

他にも、喜多川歌麿の何気ない遊女の日常を描いた美人画、江戸の町娘の美人画、打って変わって歌川広重、葛飾北斎の自然を見事に活写した風景画、それぞれ実物の浮世絵には独特の雰囲気と迫力がありました。
それは絵師・彫師・摺師の共同作業、その三者の技量やプライド、執念が宿っているせいなのでしょうか。

北斎漫画も展示されていましたが、これも凄かった。

元々はお弟子さんへのお手本として描かれたものなんですね。その数は膨大、多岐にわたる。
どれもこれも正確なデッサン、モデルの躍動感、発想の自由さ、モチーフの多さ、スゴイ。葛飾北斎の絵描きとしての実力と偉大さを実感しました。
この北斎に比肩しうる芸術家は、現代日本では宮崎駿さんとか手塚治虫さんといった人たちかなあ、とも思います。

…ああ、考えてもみれば、現代日本という国の、漫画・アニメという出版・映像文化もまた、この江戸化政文化に匹敵するパワフルさ、多様性と熱量を持っているのではないでしょうか。
1000年以上前に女流文学を成立させ、江戸時代にはヨーロッパにジャポニズムを巻き起こし、現代もまた漫画・アニメ・ゲームなどのコンテンツは世界に親しまれている。
日本は平和な時代には文化を大いに隆盛・発展させ、世界を驚かせてきた。
日本はテクノロジーや経済だけではなく、文化の国であり、文化立国ということがこの国の本来の姿なのではないか…。
それは「クールじゃぱん」云々というプロモーションとかビジネスの話ではなく、国の存立に関わる事柄ではないのか。
数多くの人が訪れていた浮世絵展の盛況ぶりを見て、そんな事を思いました。
日本人は皆、文化を愛している!でしょう?

ちなみに、個人的に一番印象に残った「推し」にしたい絵師は、歌川国芳。
構図とか、発想が現代でも古さを感じない。ファンの人が多いそうですが、それも納得です!
