おおまかな感想
『21エモン』
宇宙への夢を心に抱きながら、老舗ホテルの跡継ぎとしての仕事に奮闘するエモン。ある日、ホテル代代わりに置いて行かれた絶対生物・モンガーとの出会いから、宇宙パイロットへのあこがれはます抑えがたくなっていく…。
Amazonでの商品紹介より
私は子供の頃、『21エモン』が大好きでした。他のF先生の作品と少し違って、潰れかけの自営業者の跡取り息子という設定も珍しいし、21エモン本人がホテル経営なんか放り出して宇宙の冒険に出たがっているという、アクティブな目的を持ってる主人公も珍しい。
その『21エモン』の連載が始まったのは1968年。
『2001年宇宙の旅』がアメリカで公開されたのも、『鉄腕アトム』の連載が終了したのも68年。その二年後の70年には大阪で、「人類の進歩と調和」という、右肩上がりの‶明るい未来″を強く意識したテーマを掲げた日本万国博覧会が開催されている。
この『21エモン』を読んでいると、「ああ~、昭和の時代に想像されてた21世紀ってこうだったな~」などとノスタルジーにひたりつつ…、その一方、藤子不二雄作品特有のテーマである「異分子×日常=生活ギャグ漫画」という要素は踏襲されていて、様々な宇宙の価値観で私たちの常識を刺激しつつ現実世界を浮き彫りにしようとする、夢物語だけではない地に足の着いた近未来生活SFギャグ漫画となっていた…という事を再認識。
「つづれ屋」というみすぼらしいホテルというリアルな舞台、夢にあふれる華々しい21世紀世界、宇宙を舞台にしたおどろおどろしい冒険活劇、この三者のミスマッチに心惹かれていたのだと思います。
連載当時人気はあまり出なかったようですが、「オバケのQ太郎」や「パーマン」から、「ドラえもん」が誕生する前夜の時代に生まれた、小粒でもピリリと辛い、明けの明星的佳作。
本書の特徴
ドラえもん誕生より前、68年に執筆が開始された近未来生活ギャグ漫画『21エモン』の全集。
この『藤子・F・不二雄大全集 21エモン(2)』では、連載されていた「少年サンデー」の発売号順に各エピソードが掲載(少年サンデー68年32号から69年6号まで)。そのため、現在発売されているてんとう虫コミックス版の単行本1~4巻の掲載順とは異なっている。単行本にはカットされたエピソードも、この大全集には掲載されている。
単行本でカットされ、大全集(2)に掲載されているエピソードは以下の通り
- 「超一流 流行まんが家」 マンガのアイデアが浮かばず、つづれ屋にカンヅメ状態になった一流マンガ家フニャコフニャオ氏。なんとか原稿を描かせようとする編集者との壮絶なバトルに巻き込まれる21エモンのお話。
他に、小学館より発行されている幼児向け学習雑誌「幼稚園」に68年7月号から68年9月号まで掲載された『モンガーちゃん』全三話、81年の映画化(8月公開『21エモン 宇宙へいらっしゃい!』)に合わせて「月刊コロコロコミック」に掲載された読み切り作品『2本足で星から星へ』も収録されている。
巻末企画の特別資料室には、虫プロ商事から発刊された単行本の中表紙イラスト、連載当時の少年サンデーに載ったクイズ記事や、当時人気だった坂本九さんとのコラボレーションのグラフ記事など、多くの資料が掲載されている。
以下目次 ↓
目次
■21エモン
口絵(カラーイラスト)
『少年サンデー』編 (1968年32号~1969年6号)
なみだの真珠
宇宙は招くよ
月世界にて
密航者
宇宙漂流
星ゴロたち
木星は地獄だ
ニセ監察官
タフなモンガー
純金のお客さま
ロケットを作ろう
超一流 流行まんが家
宇宙オリンピック
オラニモ誕生日ガアルノダ
大富豪ゴンスケ
イモかロケットか
大宇宙へGO!!
トイレ騒動
ゴンスケ船長
ノッペラ星の押し売り
炎の星
ウッシシ密輸団
銀河系No.2の星
そして銀河系No.1!!
しあわせの星
宇宙の墓場から
『月刊コロコロコミック』編 (1981年8月号)
2本足で星から星へ
■モンガーちゃん
はじめましてモンガーちゃん
海か山か
ロボット屋そうどう
[巻末企画]
初出掲載リスト
特別資料室
あとがきにかえて 藤子・F・不二雄
解説 「21エモンはヒーロー番組の教科書!?」 塚田英明(東映プロデューサー)
筆者 | 藤子・F・不二雄 |
発売日 | 2010年12月29日 |
発行所 | 株式会社 小学館 |
総ページ数 | 447ページ |
本の厚さ | 3.0 cm |
判型 | A5判 148✕210 |
ISBN-10 | 4091434470 |
ISBN-13 | 978-4091434470 |