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2025年8月7日 0
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松本零士ダンジョンへ行きました「松本零士展 創作の旅路」観覧記【日々の感想】

松本零士ダンジョンへ行きました「松本零士展 創作の旅路」観覧記【日々の感想】
2025年8月7日 0
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会場:六本木ヒルズ東京シティビューにて

文:ケン一探偵長

六本木ヒルズで開催中の『「銀河鉄道999」50周年プロジェクト 松本零士展 創作の旅路』に行って来ました。

松本マンガと言えば、まず思いつくのは「宇宙海賊キャプテンハーロック」や「宇宙戦艦ヤマト」、「銀河鉄道999」等々…。そこにあるのは強烈な『カッコイイ』『ロマン』の世界。松本作品特有のヒロイズム、ロマンチシズム、その世界観はどうやって生み出されたものなのか。
その松本零士先生の七十年にわたる創作の旅路をたどる、「創作宇宙」の秘密に迫るという今回の展示は、何かしらの気づきが得られるのではなかろうかと見に行ったわけであります。

ぎろっぽんヒルズ
会場は52階!
やっぱり52Fは高~い!

展示は松本零士先生のデビュー前の同人誌、デビュー作の実物展示から始まり、貴重な原画がズラリ並んでる。壮観です。

ZONE1では、松本零士先生の歴史を8つのテーマに分けて原画などを展示。

ZONE1
歩みを刻む 零士メーター

萌芽期
デビュー期
自己表現期
転換期
新機軸期
展開期
自在期
アニメ期

ZONE2では『銀河鉄道999』の第一話や有名エピソードの原画、女性キャラ、メカへのこだわり、といった展示を通して、松本作品に通底するテーマについて考え、

図録より 「銀河鉄道999」第一話

ZONE3では、多くのカラー原画展示で松本零士先生の表現力について考える内容。

しかし、「999」の原画を見ることが出来たのは感動でした~。

女性キャラの美しさ、その画風はデビュー間もないころの少女マンガ執筆時代に培われたものなのですね…。
手塚治虫先生と同様、松本零士先生も大の昆虫ファンというのも初めて知りました。

原画は非常に興味深かったです。
瞳に描かれる、少女マンガ特有の星の描写は実に細かく繊細。顔は面長、スラリと長い手足、指。そのスマートさ、流麗さは竹久夢二などの美人画をさらに発展させたようなインパクトがありました。

『1000年女王』広報用イラスト
『ながぐつをはいたねこ』ジグゾーパズル用イラスト 瞳の星は控えめながら凄く繊細

一方で3等身・4等身キャラのデッサン・デザインは非常に大胆・豪放。

「宇宙海賊キャプテンハーロック」より ↑ 三人とも女性キャラ

これが松本零士ワールドというものなのか、と感じました。

この幅の広さ、ミクロのディテールと宇宙大のマクロの世界観が渾然一体となったような、まさに「宇宙」。その創作宇宙の、あまりにも多面的な広大さに圧倒されました。

講談社刊「クイーンエメラルダス」第2巻より

つまり言い方を変えれば…、その広大さはつかみ所がないというかなんというか。

松本作品特有のロマン、すなわち未来や宇宙、人間の心、希望への絶対的な信頼。メカへのこだわり、繊細なディテール。

講談社刊「クイーンエメラルダス」第2巻より

こういった創作宇宙の原点、基準ともいえるのは初のヒット作であり、自身の体験にも大いに根ざしている「男おいどん」や、「戦場まんがシリーズ」の作品群なのではなかろうか。残酷なリアリティの中に信じるべき、信じるに足る大切なものを見出す、そのテンションの高さ、緊張感というものが松本作品のロマンといえるのではないか?

講談社刊「男おいどん」第2巻より

とも思ったのですが、どうも松本先生が本当に描きたかったものはメルヘンやファンタジー作品らしい。

メ、メルヘン?

メルヘンとファンタジーの融合。これが松本先生がもっともやりたかった事で…。それを実現できたのが『ちいさなマキ』という作品らしい。

不思議な薬で身体が小さくなった少女が虫の世界を探検する、オールカラーの新聞連載漫画「ちいさなマキ」について松本零士はこう述べています。自分がもともと志していたのは、こういうメルヘンとファンタジーを合体させたものだった、高校生の頃に地元の新開で同じ方向性で連載したが、未熟でうまくいかなかった、と(単行本あとがき)。

松本零士展 図録より
松本零士作 eBookJapan Plus刊『ちいさなマキ』

SFコミックの巨匠・松本零士が全編オールカラーで描いた感動のメルヘンファンタジー。流れ星が近くの神社に落ちたのを目撃した幼い少女・マキ。その後、小さな金色の灰皿のような円盤につきまとわれたマキは、それに乗っていた小さな宇宙人・ミライに助けを求められる。父親が発明したミクロ液を飲んで小さくなったマキと猫のミーくんは、ミライの母である女王様を探すために、円盤に乗って大冒険を……!?

ブックライブ商品説明より

1977年読売新聞の日曜版に子供向け作品として連載されていたもので、これは読んでみると非常に興味深い。松本作品特有のエッセンスが存分に詰まっている。

松本作品にはよく出てくる擬人化された昆虫というモチーフや、知能が発達した昆虫が人類と対立する、という構図は昆虫好きの松本先生ならではの設定ですし、そのビジュアルは「宇宙戦艦ヤマト」の第16話「ビーメラ星 地下牢の死刑囚!」を彷彿とさせるものがある。

宇宙戦艦ヤマト第16話「ビーメラ星 地下牢の死刑囚!」より
『ちいさなマキ』より

そしてバリバリにハードSFなストーリー。未来的な円盤が出てくる一方で戦車などの渋いメカも出てくる。そして未来への希望。松本作品の全てが詰まっている、と言っても過言ではない。

『ちいさなマキ』より

ただ、どうなんでしょう、ほぼ同時期に「銀河鉄道999」の連載が始まっていますが「999」も、ややファンタジーやメルヘンの要素も感じるし、本流松本作品のデモンストレーション的な作品なのでしょうか。

初期の作品はメルヘンの要素が強いけど…、そうなんだ。

たしかに、「銀河鉄道999」は宮沢賢治的なメルヘンや寓話的な要素はあるし…、これこそが表現したかった方向性なのかもしれないけど…、どうなんだろう。

講談社刊「クイーンエメラルダス」第2巻より

自己主張が強すぎて、一体何が言いたいのかよく分からない作品もたまに出てくる松本ワールド(ダンガードAとか、999の続編とか、キャプテンハーロックもどちらかと言うとその部類(※私的感想ですが))。

そのアクの強さの真相・深層を知りたいと発起して赴いた六本木ですが、その謎はやはり、簡単に解けるものでもないと感じました。

私が考えているよりも、遥かに松本零士先生の創作宇宙は広く、様々な面を持ち合わせている。

『カッコいい』の一言で簡単に言い表せるものでもない。

展示されていた松本先生が残した言葉などを見ていると、生きるという事への強い信頼、信念。未来というものに対して一切の疑念を差しはさまない…。

松本零士とは、怖くとも道が分からなくとも、そこに宇宙があるからこそ、人の心と夢があるからこそ世界すべてがフロンティアであり…、だから歩みを止めなかった旅人。その旅路を綴り続け、それは今も終わってはいないのではないか…という事を考えもしました。

やはり、そのセンス、思想、興味は尽きない、偉大な作家だと思いました。

片道でいいから
俺を宇宙に行かせてくれ。

科学者が言うことだけが宇宙の真理の全部では無い。
自分の目で見たものは、 それが幻覚でなければ信じることだ。

松本零士 「松本零士展 創作の旅路」より

ちなみに、某アーチストさんと大モメにモメたあの言葉の展示はさすがにありませんでした。

「銀河鉄道999」50周年プロジェクト 松本零士展 創作の旅路 ちいさなマキ 六本木ヒルズ 松本零士 銀河鉄道999

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