ケンイチ探偵 感想倶楽部
  • HOME
  • 全ての投稿記事
2022年10月10日 0
アニメの感想, レビュー記事, 感想記事, 映画レビュー

『君僕』からがオススメ『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』 映画レビュー

『君僕』からがオススメ『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』 映画レビュー
2022年10月10日 0
アニメの感想, レビュー記事, 感想記事, 映画レビュー
ホーム » 感想記事 » レビュー記事 » 映画レビュー » 『君僕』からがオススメ『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』 映画レビュー
『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』ホームページより

二作品同時公開された映画『僕が愛したすべての君へ』&『君を愛したひとりの僕へ』のレビューです。

これは、人々が少しだけ違う並行世界を行き来していることが実証された世界での、ふたつの物語。

同じ名前の主人公・暦と、彼と出会うふたりの少女。

別々だった世界が交差していたことに気づいたとき、隠された“本当の愛”がみえてくる——

パンフレット〝INTRODUCTION〟より

目次

  • 大まかな感想
  • 概要
  • 脚本・観る順序について
  • 作画・キャラクターデザインについて
  • 声優さんの演技について
  • スタッフ・上映時間

大まかな感想

原作を読んでから鑑賞しました。

乙野四方字 著 ハヤカワ文庫刊『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』

原作を読んで、テーマとして強烈に感じたのは「純愛」。
主人公 暦の愛に殉じる姿勢、愛がゆえに人生を左右されてしまう和音の悲しさ。クレイジーとも受け取れるような、様々な愛の形が現れるのですが、それが終劇の一点に集約されるその感動。
特に『僕が愛したすべての君へ』は、並行世界に居る自分と、この世界に居る自分は同じ人間と言えるのか、その人を愛するとはどういうことなのか、という自己意識や自我のテーマに踏み込んでいる。
考えさせられるテーマもあり、伏線がどんどん回収されていくタイムリープものや多世界ものの伝統的SF要素の面白さも堪能できる。
SFとしてそれほど高度で難解というわけではないので読みやすい。スゴく良い作品だと思いました。

ただ、映画版はそのあたりの要素がやや曖昧になっているようにも見えました。
原作の世界設定はそれほど難解ではないものの、「虚質空間」とか「虚質紋」「アインズヴァッハの海と泡」「オプショナル・シフト」「不可避の事象半径」などのかなり独自の設定用語が飛び交う世界観になっているので(作者の乙野四方字さんが最初に着想を得たのは『新世紀エヴァンゲリオン』の第12使徒レリエルの実体「虚数空間(ディラックの海)」からなのだとか)、これを100分程度の映画で完全に理解するのは難しいし、様々に張られた伏線も把握しづらいかも。さらに、二作品見ないと全容を理解できないというのも初めて見る人には印象が良くないかも知れないし…(¥1900×2!)、後述する作画面でのパワー不足とか、ちょっとネガティブな要素もいろいろ感じられるんですよね…。

二作品同時刊行といった原作のユニークさ、オンリーワン的な魅力を完全に表現する事のハードルの高さというものを感じてしまいました。
ただ、感動的な作品であるのは間違いないです。

概要

乙野四方字(おとのよもじ)さんの小説『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』が原作。
「虚質空間」という作品独自の設定で、『パラレル・シフト』によって並行世界を自由に移動できるようになった世界を舞台にした所謂パラレルワールドもの、多世界解釈ものSF作品。
『僕愛』『君愛』は主人公 暦が生きた同じ時間・場所の物語を、ふたつのパラレルワールドを舞台に描いた作品。

その特徴は、同じ場所・同じ主人公を描きながら、読む順番によって得られる読後感がまったく変わること。

「僕が愛したすべての君へ」から読めばちょっと切ない物語に、「君を愛したひとりの僕へ」から読めば幸せな物語に。

その仕掛けも含め、この小説はTikTokなどのSNSで話題となり、シリーズ累計40万部を突破するヒット作となった。

パンフレットより

このふたつの作品をふたつの制作会社が映像化。
『僕が愛したすべての君へ』をBAKKEN RECORDが制作。監督は松本淳さん(『閃光のナイトレイド』監督、『攻殻機動隊』演出など)。
『君を愛したひとりの僕へ』をトムス・エンタテインメントが制作。監督はカサヰケンイチさん(『ハチミツとクローバー』『わがまま☆フェアリー ミルモでポン!』監督など)。

脚本・観る順序について

『「僕が愛したすべての君へ」から読めばちょっと切ない物語に、「君を愛したひとりの僕へ」から読めば幸せな物語に』。

確かに『僕愛』はちょっと悲しい愛のお話で、『君愛』は狂気をはらむまでの愛が感動を呼ぶお話。ふたつの話が合わさって完結する物語なので、両作を観ないと完全には『僕君』の世界は理解できない。
ただ、ストーリー展開は明らかに『君を愛したひとりの僕へ』で張られた伏線やナゾが『僕が愛したすべての君へ』で回収され解明される構成になっているので、どう考えても『君を愛したひとりの僕へ』から先に見たほうが良いです。

作画・キャラクターデザインについて

作画は、映画作品としてはあまり良いとは思えず。
作画レベルが不安定で、人体の描写はちょっと大雑把。TVアニメでもあまり見ないような、身体のパーツを思いっきり省略した描写なども出てくる(瑠璃色なキャベツ的な)。ただし、最近の他のアニメ映画と比較すれば…、極端にレベルが低いわけではないと思います。
キャラクターデザインは、『君を愛したひとりの僕へ』はごくごく標準的なデザインで、『僕が愛したすべての君へ』はすこしエッジの利いた独創的な感じ(ヒイラギの葉っぱのような輪郭!)。キャラクター原案のshimanoさんの絵のテイストには『僕愛』のほうが近いかも。

声優さんの演技について

物語は70年余りという長い年月を描いているため、キャラクターによっては幼年期、青・壮年期、老年期と各年代で声優さんが違ったりします。
声の演技で出演しているのは、俳優の蒔田彩珠さん、橋本愛さん、宮沢氷魚さん、余貴美子さん、西岡徳馬さんなど。
橋本愛さん、余貴美子さん、西岡徳馬さんの演技は素晴らしかったです。
主人公 暦を演じた宮沢氷魚さんとヒロイン栞を演じた蒔田彩珠さんは…、私には一見棒読みにも聞こえる場面があったのですが…、初々しさや瑞々しさというものはキャラクターに良く合っていて、説得力は感じました。

声の演技の成功の可否というのは作画の表現力とかも関係するんですかね、私は映像や演技の専門家ではないのでなんとも言えませんが。

スタッフ・上映時間

映画『僕が愛したすべての君へ』
原作乙野四方字
「僕が愛したすべての君へ」(ハヤカワ文庫刊)
監督松本 淳
脚本坂口理子
キャラクター原案shimano
キャラクターデザイン近藤圭一 佐々木里花 小宮山楓乃 
メイン演出工藤 進 萩原 健
作画監督藤崎賢二 大前祐美子 柴田健児
美術監督安田ゆかり
音楽大間々昴
企画・プロデュース石黒研三
アニメーション制作BAKKEN RECORD
出演高崎 暦:宮沢氷魚
    (幼少期)田村睦心
    (老年期)西岡徳馬
瀧川和音:橋本 愛
    (老年期)余貴美子
佐藤 栞:蒔田彩珠
日高翔大:浜田賢二
佐藤紘子:水野美紀
高崎康人:西村知道
高崎里美:野路ももこ
主題歌「雲を恋う」
歌:須田影凪
配給東映
上映時間約1時間42分
本編上映時間約1時間37分
クレジット時間約5分
ポストクレジットシーン無し
映画『君を愛したひとりの僕へ』
原作乙野四方字
「君を愛したひとりの僕へ」(ハヤカワ文庫刊)
監督カサヰケンイチ
脚本坂口理子
キャラクター原案shimano
キャラクターデザイン町田真一
メイン演出備前克彦 松永真彦
作画監督高野ゆかり 小嶌エリナ 村田憲泰
美術監督加藤靖忠
音楽大間々昴
企画・プロデュース石黒研三
アニメーション制作トムス・エンタテインメント
出演日高 暦:宮沢氷魚
    (幼少期)田村睦心
    (老年期)西岡徳馬
佐藤 栞:蒔田彩珠
瀧川和音:橋本 愛
    (老年期)余貴美子
日高翔大:浜田賢二
佐藤紘子:水野美紀
高崎康人:西村知道
高崎里美:野路ももこ
主題歌「紫苑」
歌:Saucy Dog
配給東映
上映時間約1時間38分
本編上映時間約1時間29分
クレジット時間約5分
ポストクレジットシーン有り 約4分

SF 乙野四方字 僕が愛したすべての君へ 君を愛したひとりの僕へ

前の記事アクト1が始まった!『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』【映画の雑感】次の記事 『メイドインアビス』深界六層の折々のせりふ・冒険の感想【折々のせりふ】③

コメントを残す コメントをキャンセル

コメントを投稿するにはログインしてください。

最近の投稿

  • つくば万博訪問記① 当時の思い出とつくば市の今【マイ聖地探訪の旅】 2025年9月23日
  • そう、そうです。共生の、感動的恋物語です!映画『ChaO』見ました【映画の雑感】 2025年9月4日
  • 見て実感 日本のアニメーション発展の歴史「高畑勲展」観覧記【日々の感想】 2025年8月27日
  • 松本零士ダンジョンへ行きました「松本零士展 創作の旅路」観覧記【日々の感想】 2025年8月7日
  • 火の鳥見開き生原稿で実感する〝偉人〟手塚治虫が描く魔法。その精髄を考える【日々の感想】 2025年7月18日
  • 「TAMIYA プラモデルファクトリー」で伝説のF1マシンTyrrell P34を愛でる 2025年7月4日
  • 上野の森美術館「五大浮世絵師展」で思う、JAPANの存立と文化立国【日々の感想】 2025年6月25日
  • 破滅の海を仲間と共に。新たな再生の道 映画『Flow』鑑賞記【映画レビュー】 2025年4月15日

カテゴリー

アーカイブ

タグ

21エモン GUNDAM FACTORY YOKOHAMA SF THE GUNDAM BASE YOKOHAMA Satellite この世界の片隅に ずっとおうえん。プロジェクト 2011+10… オナベ ガンプラ ククルス・ドアンの島 サンシャインシティ サンシャインシティ噴水広場 スタジオジブリ スパイダーマン チンプイ トモエ学園 パペットアニメーション ピノッキオの冒険 プラモデル マーベル ミミック メイドインアビス メイドインアビス烈日の黄金郷 モンガー 人造人間キカイダー 動くガンダム 吾峠呼世晴 宇宙戦艦ヤマト 安彦良和 宮崎駿 小林宗作 新海誠 星を追う子ども 東日本大震災 桜 機動戦士ガンダム 池袋 窓ぎわのトットちゃん 葬送のフリーレン 葬送のフリーレン展 ─冒険の終わりから始まる物語─ 藤子・F・不二雄 藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版> 藤子・F・不二雄大全集 藤子不二雄 鬼滅の刃 黒柳徹子
ケンイチ探偵 感想俱楽部
HOME | お問い合わせ | プライバシーポリシー

このサイトについて

世の中知らないことだらけ。
そんなケン一が、探偵となって世界の読み物、映画、出来事を調査・レビューする感想ブログであります。

キャラ紹介

サイト内検索

カテゴリー

最近の投稿

  • つくば万博訪問記① 当時の思い出とつくば市の今【マイ聖地探訪の旅】
  • そう、そうです。共生の、感動的恋物語です!映画『ChaO』見ました【映画の雑感】
  • 見て実感 日本のアニメーション発展の歴史「高畑勲展」観覧記【日々の感想】
  • 松本零士ダンジョンへ行きました「松本零士展 創作の旅路」観覧記【日々の感想】
  • 火の鳥見開き生原稿で実感する〝偉人〟手塚治虫が描く魔法。その精髄を考える【日々の感想】

各お部屋メニュー

  • アニメの感想
  • プライバシーポリシー
  • 全ての投稿記事
  • 問い合わせフォーム
  • 折々のせりふ
  • 映画の感想
  • 漫画の感想
  • HOME
上にスクロール