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2021年12月1日 0
レビュー記事, 感想記事, 漫画の感想, 漫画本レビュー

SUNDAY COMICS版 人造人間キカイダーレビュー 【マンガ本レビュー】

SUNDAY COMICS版 人造人間キカイダーレビュー 【マンガ本レビュー】
2021年12月1日 0
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秋田書店刊 SUNDAY COMICS 人造人間キカイダー ①

本作の概要

漫画版『人造人間キカイダー』は、TV版の「キカイダー」のコラボ作品として、1972年に小学館「週刊少年サンデー」で連載開始。内容的には、『人造人間キカイダー』と、その続編である『キカイダー01』を合体させたオリジナルストーリー。「キカイダー」のジローを主人公として、「キカイダー01」のイチロー、ビジンダー、さらに「00」(ダブルオー)なるオリジナルキャラも中盤からお話に加わり、ハカイダー、そして「ダーク」・「シャドウ」といった悪の組織と戦いを繰り広げる、キカイダーシリーズを総括する作品となっている。

SUNDAY COMICS版 人造人間キカイダー ④ より

この「キカイダー」の連載は、石ノ森章太郎先生が描いたネーム(下書き)を基に、石ノ森先生のアシスタントである細井雄二氏、土山芳樹氏、山田ゴロ氏、ひおあきら氏、石川のりひこ氏らがペン入れ作画を行うという制作体制だったとのだとか。

スタッフの一人である細井雄二氏は雑誌の取材にこう答えています。

「『キカイダー』は週に一度作画メンバーが集まって、一晩がかりで仕上げるという感じでした。役割の分担は特に決めていなくて、個人単位で自分のやりたいページを作業していたという感じです。だから、ページによってキャラクターの絵が変わっていたりするんですが(笑)」

「講談社オフィシャルファイルマガジン 仮面ライダー③ 仮面ライダーマンガ家列伝 第三回 細井雄二」 より

SUNDAY COMICS版 人造人間キカイダー⑤ P102.103 より
ルミの乳母(ガード)ロボットのリエ子が、体の「ある部位」から「おもわず」ビームを撃ってしまうシーン。P102では、眼に白目の無い、典型的な石ノ森的不思議女性キャラなのが、次のページでは白目アリの、これまた典型的な石ノ森美少女キャラになっている。

描いているのは石ノ森章太郎先生の高名なアシスタントさんばかりですので、「作画が不安定」と言うワケではなく、描き手のキャラに対する解釈の違いが出ているという感じではあります。


おおまかな感想

一方、ストーリー展開はやや強引かも。

「00」(ダブルオー)という新キャラが突然登場したり、

SUNDAY COMICS版 人造人間キカイダー⑤ より
イチローがしばらく家を空けていたため、寂しさを紛らわすためにジロー作製したという人造人間。
一人暮らしが寂しくなって、ペットを飼うようになったのと同じ…感覚?

ハカイダーが突然味方になったり…

SUNDAY COMICS版 人造人間キカイダー⑤ より
イチローもポカ~ン。

ハカイダーの言う事になんでも従うようになる「服従回路」(イエッサー) なる設定も終盤に登場。

SUNDAY COMICS版 人造人間キカイダー⑥ より
そもそも「良心回路」(ジェミニィ) の存在が「人造人間キカイダー」の大前提だと思うのですが、それをあっさり否定するような設定簡単に出しちゃって良いのか?…という気も。
この後の展開を考えると、必要な伏線ではあります。

このような、TV版にはないストーリー展開が伏線もなく突然現れるため、やや説明不足に見えてしまいます。

やはり、漫画版『キカイダー』はTV版との連動企画ということもあり、石ノ森章太郎先生が最終的な執筆に関わっていないスピンオフ的作品なのかな~…という感もあります。

ただ、石ノ森作品はこういうパワーで押し切るような展開の作品は多い気もしますが。

ただ、描写は粗削りであっても、最終的には破綻することなく『人造人間キカイダー』のテーマを完結させていると思います。

SUNDAY COMICS版 人造人間キカイダー① より
作品冒頭に、ディズニーアニメ版「ピノキオ」の木彫り人形がピノキオとなる場面が引用されている。

先ほど紹介した乳母ロボットのリエ子が、自身がロボットである事に気づき衝撃を受けるように、人間のアイデンティティに迫ろうとする「キカイダー」のテーマは、同じく「人間の条件」がテーマであるディズニー版『ピノキオ』、もしくは「人間」そのものへのアンチテーゼを提示して終わる。

『愛』によって人間になったピノキオに対し、ジローは何によって人間となるのか。

それはジローが語る通り『永久に続く心のたたかい』。

SUNDAY COMICS版 人造人間キカイダー⑥ より

しかし結局のところ、結論や希望を示す訳では無く、絶望的な現状認識の物語に留まっているとも言える。

しかし、その「絶望」こそがキカイダーなのかも。

SUNDAY COMICS版 人造人間キカイダー① より

『い…いかん、失敗だ!』

という、物語冒頭の光明寺博士の悲劇的なセリフが全てを物語っているのではないでしょうか。

この不安定感、絶望感こそ、人間存在の映し鏡のようなもの。

それがテーマだというのですから、それはヒーロー物にあるまじき設定。そして、その設定を見事に体現しているキカイダーのデザイン。

それが読む者、観る者に強烈な印象と、作品への興味を掻き立てる魅力になっている点が、『人造人間キカイダー』の凄さなのではないかと、そう思います。


本書の特徴

私が読んだのは秋田書店刊サンデーコミックス版の『人造人間キカイダー』。

連載されたのは「週刊少年サンデー」で小学館ですが、読んだのは秋田書店の新書判漫画単行本レーベルの元祖と言われるサンデーコミックス版。

装丁が非常にレトロチックなのが良いので秋田書店版を買いました。

ただし、私が所有しているのは平成10年前後の版ですが、現在発刊されているものはセリフが一部改変されています(石ノ森章太郎全集も同じく)。

SUNDAY COMICS 人造人間キカイダー⑥ 平成13年20版
SUNDAY COMICS 人造人間キカイダー⑥ 平成23年21版

なお、6巻には石ノ森章太郎先生執筆による読み切り短編『胎児の世紀』も収録されている。

初出 講談社 週刊少年マガジン 1972年11月19日 49号掲載
出てくるキャラが似てます…が、内容的には「キカイダー」との関連はナシ。
SUNDAY COMICS 人造人間キカイダー ①
筆者石ノ森章太郎
発売日1972年12月1日
発行所株式会社 秋田書店
総ページ数232ページ
判型新書判 112✕174
ISBN-104253063160
ISBN-13978-4253063166
定価本体 419円+税
2022年 1月時点
SUNDAY COMICS 人造人間キカイダー ②
筆者石ノ森章太郎
発売日1973年2月1日
発行所株式会社 秋田書店
総ページ数227ページ
判型新書判 112✕174
ISBN-104253063179
ISBN-13978-4253063173
定価本体 419円+税
2022年 1月時点
SUNDAY COMICS 人造人間キカイダー ③
筆者石ノ森章太郎
発売日1973年5月1日
発行所株式会社 秋田書店
総ページ数223ページ
判型新書判 112✕174
ISBN-104253063187
ISBN-13978-4253063180
定価本体 419円+税
2022年 1月時点
SUNDAY COMICS 人造人間キカイダー ④
筆者石ノ森章太郎
発売日1973年10月1日
発行所株式会社 秋田書店
総ページ数219ページ
判型新書判 112✕174
ISBN-104253063195
ISBN-13978-4253063197
定価本体 419円+税
2022年 1月時点
SUNDAY COMICS 人造人間キカイダー ⑤
筆者石ノ森章太郎
発売日1974年5月1日
発行所株式会社 秋田書店
総ページ数215ページ
判型新書判 112✕174
ISBN-104253063209
ISBN-13978-4253063203
定価本体 419円+税
2022年 1月時点
SUNDAY COMICS 人造人間キカイダー ⑥
筆者石ノ森章太郎
発売日1974年8月1日
発行所株式会社 秋田書店
総ページ数216ページ
判型新書判 112✕174
ISBN-104253063217
ISBN-13978-4253063210
定価本体 419円+税
2022年 1月時点

SUNDAY COMICS 人造人間キカイダー 石ノ森章太郎 胎児の世紀

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