
本作の概要
漫画版『人造人間キカイダー』は、TV版の「キカイダー」のタイアップ作品として、1972年に小学館「週刊少年サンデー」で連載開始。内容的には、『人造人間キカイダー』と、その続編である『キカイダー01』を合体させたオリジナルストーリー。「キカイダー」のジローを主人公として、「キカイダー01」のイチロー、ビジンダー、さらに「00」(ダブルオー)なるオリジナルキャラも中盤からお話に加わり、ハカイダー、そして「ダーク」・「シャドウ」といった悪の組織と戦いを繰り広げる、キカイダーシリーズを総括する作品となっている。

この「キカイダー」の連載は、石ノ森章太郎先生が描いたネーム(下書き)を基に、石ノ森先生のアシスタントである細井雄二氏、土山芳樹氏、山田ゴロ氏、ひおあきら氏、石川のりひこ氏らがペン入れ作画を行うという制作体制だったとのだとか。
スタッフの一人である細井雄二氏は雑誌の取材にこう答えています。
「『キカイダー』は週に一度作画メンバーが集まって、一晩がかりで仕上げるという感じでした。役割の分担は特に決めていなくて、個人単位で自分のやりたいページを作業していたという感じです。だから、ページによってキャラクターの絵が変わっていたりするんですが(笑)」
「講談社オフィシャルファイルマガジン 仮面ライダー③ 仮面ライダーマンガ家列伝 第三回 細井雄二」 より

ルミの乳母(ガード)ロボットのリエ子が、体の「ある部位」から「おもわず」ビームを撃ってしまうシーン。
描いているのは石ノ森章太郎先生の高名なアシスタントさんばかりですので、「作画が不安定」と言うワケではなく、描き手のキャラに対する解釈の違いが出ているという感じではあります。
おおまかな感想
一方、ストーリー展開はやや強引かも。
「00」(ダブルオー)という新キャラが突然登場したり、

イチローがしばらく家を空けていたため、寂しさを紛らわすためにジロー作製したという人造人間。
一人暮らしが寂しくなって、ペットを飼うようになったのと同じ感覚?
ハカイダーが突然味方になったり…

イチローもポカ~ン。
ハカイダーの言う事になんでも従うようになる「服従回路」(イエッサー) なる設定も終盤に登場。

「良心回路」(ジェミニィ) の存在が「人造人間キカイダー」のテーマそのものなのに、それをあっさり否定するような設定を簡単に出しちゃって良いのか?という気も。
この後の展開を考えると、必要な伏線ではあるのですが。
このような、TV版にはないストーリー展開が突然現れる。
やはり、漫画版『キカイダー』はTV版との連動企画ということもあり、石ノ森章太郎先生が最終的な執筆に関わっていないスピンオフ的作品なのかな~…という感もあります。
ただ、描写は粗削りであっても、最終的には『人造人間キカイダー』のテーマを完結させていると思います。

作品冒頭に、ディズニーアニメ版「ピノキオ」の木彫り人形がピノキオとなる場面が引用されている。
先ほど紹介した乳母ロボットのリエ子が、自身がロボットである事に気づき衝撃を受けるように、人間のアイデンティティに迫ろうとする「キカイダー」のテーマは、同じく「人間の条件」がテーマであるディズニー版『ピノキオ』、もしくは「人間」そのものへのアンチテーゼを提示して終わる。
『愛』によって人間になったピノキオに対し、ジローは何によって人間となるのか。
それはジローが語る通り『永久に続く心のたたかい』。

しかし、その「苦しみ」「絶望」こそがキカイダーなのかも。

『い…いかん、失敗だ!』
という、物語冒頭の光明寺博士の悲劇的なセリフが全てを物語っているのではないでしょうか。
この不安定感、絶望感こそ、人間存在の映し鏡のようなもの。
それがテーマだというのですから、それはヒーロー物としては異色。そして、その設定を見事に体現しているキカイダーのデザイン。
それが読む者、観る者に強烈な印象と、作品への興味を掻き立てる魅力になっている点が、『人造人間キカイダー』の凄さなのではないかと、そう思います。
本書の特徴
私が読んだのは秋田書店刊サンデーコミックス版の『人造人間キカイダー』。
連載されたのは小学館「週刊少年サンデー」であるわけですが、今、昔ながらの装丁で単行本が購入できるのは秋田書店のサンデーコミックス版だけではないでしょうか。

ただし、私が所有しているのは平成10年前後の版なのですが、現在発刊されているものはセリフが一部改変されています(石ノ森章太郎全集も同じく)。


なお、6巻には石ノ森章太郎先生執筆による読み切り短編『胎児の世紀』も収録されている。


| SUNDAY COMICS 人造人間キカイダー ① | |
|---|---|
| 筆者 | 石ノ森章太郎 |
| 発売日 | 1972年12月1日 |
| 発行所 | 株式会社 秋田書店 |
| 総ページ数 | 232ページ |
| 判型 | 新書判 112✕174 |
| ISBN-10 | 4253063160 |
| ISBN-13 | 978-4253063166 |
| 定価 | 本体 419円+税 |
| SUNDAY COMICS 人造人間キカイダー ② | |
|---|---|
| 筆者 | 石ノ森章太郎 |
| 発売日 | 1973年2月1日 |
| 発行所 | 株式会社 秋田書店 |
| 総ページ数 | 227ページ |
| 判型 | 新書判 112✕174 |
| ISBN-10 | 4253063179 |
| ISBN-13 | 978-4253063173 |
| 定価 | 本体 419円+税 |
| SUNDAY COMICS 人造人間キカイダー ③ | |
|---|---|
| 筆者 | 石ノ森章太郎 |
| 発売日 | 1973年5月1日 |
| 発行所 | 株式会社 秋田書店 |
| 総ページ数 | 223ページ |
| 判型 | 新書判 112✕174 |
| ISBN-10 | 4253063187 |
| ISBN-13 | 978-4253063180 |
| 定価 | 本体 419円+税 |
| SUNDAY COMICS 人造人間キカイダー ④ | |
|---|---|
| 筆者 | 石ノ森章太郎 |
| 発売日 | 1973年10月1日 |
| 発行所 | 株式会社 秋田書店 |
| 総ページ数 | 219ページ |
| 判型 | 新書判 112✕174 |
| ISBN-10 | 4253063195 |
| ISBN-13 | 978-4253063197 |
| 定価 | 本体 419円+税 |
| SUNDAY COMICS 人造人間キカイダー ⑤ | |
|---|---|
| 筆者 | 石ノ森章太郎 |
| 発売日 | 1974年5月1日 |
| 発行所 | 株式会社 秋田書店 |
| 総ページ数 | 215ページ |
| 判型 | 新書判 112✕174 |
| ISBN-10 | 4253063209 |
| ISBN-13 | 978-4253063203 |
| 定価 | 本体 419円+税 |


