男社会に挑んだ少女 映画『カラミティ』レビュー【映画レビュー】

フランス映画です。
フランスのアニメというと娯楽性よりアート志向の強い作品が多い、というイメージがあったのですが、この作品は違う。ワクワク、ドキドキ、ひたむきさの感動、美しい作画、マーサのカッコ良さ……。エンターテイメントとして痛快な作品でした。
本作の概要
あらすじ
『カラミティ』は、西部開拓史上、初の女性ガンマンとして知られるマーサ・ジェーン・キャナリーの子供時代(12歳)の物語です。マーサは家族とともに大規模な幌馬車隊で西に向けて旅を続けていました。旅の途中、父親が暴れ馬で負傷し、マーサが家長として幼い兄弟を含め、家族を守らなければならない立場になってしまいます。
公式ホームページより
マーサ・ジェーンはアメリカ西部開拓時代の女性ガンマンであり、軍の斥候でもあった人物。
軍服を着て男装し、異名は「カラミティ・ジェーン」であり、「平原の女王」とも呼ばれていたのだとか。

フランス・デンマーク共同制作作品。監督は『ブレンダンとケルズの秘密』(09’)では助監督を務め、その後『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』(15′)で監督デビューを果たしたレミ・シャイエ氏。
その大きな特徴は、輪郭線を使わないパステル絵画のような作画。そして、常に自分で運命を切り開いてゆく女性を主人公にしている点。
本作は2020年に完成し、「アヌシー国際アニメーション映画祭にてワールド・プレミア上映され、見事クリスタル賞(グランプリ)を受賞しています」(公式ホームページ)。

おおまかな感想
何といってもパステル画や油彩の印象派絵画のようなルックスに引き込まれました。なんだか凄くアニメーションを観ている、という気分になります。

カラミティでは、キャラクターを縁取りせず、色彩によるフラット・ペインティングで人物と背景をかき分けている。この手法を開発したレミ・シャイエと「ロング・ウェイ・ノース」の美術チームは「背景に人物を溶け込ませること」を目標にしてきた。
パンフレットより
そうか、なるほど…。アニメの背景美術とキャラに微妙なミスマッチが存在するのは技術的にどうしようもない事。しかし、『ロング・ウェイ・ノース』『カラミティ』にはミスマッチ感が全くない。完全に背景とキャラが一体化していて、美しい絵画そのものが動いているように見える。作画自体もシンプルながら雄大な空気感を感じるリアリティがあり、これが画面に引き込まれた要因か…と、納得しました。
前作にあたる『ロング・ウェイ・ノース』では、探検家の祖父の名誉を守るために北極圏へと一人で旅立つ貴族の少女が描かれていましたが、今回はアメリカ西部オレゴンに向かう幌馬車隊開拓民の少女、マーサ・ジェーンが主人公。
マーサは過酷な開拓民の生活の中で、ケガをした父親の代わりを務めるためにズボンを履き、髪を短く切り、馬を操り、家族を守る一人の人間としての自立を目指す。しかし、それは当時考えられていた女性の役割を逸脱したもので、「現体制への侮辱」(パンフレット)と周りからは捉えられてしまう。

さらに開拓団の中で起こった大きなトラブルの犯人に仕立て上げられてしまい、マーサの孤立は決定的に。マーサは自らの潔白を証明するために一人馬を駆り、開拓団を離れる───。

誇りを取り戻すために一人戦う少女、という構図は『ロング・ウェイ・ノース』とよく似ている。ただ、今回は「女性の役割」というミソジニーに立ち向かうという、「誇り」の内実がより社会的になっている。
最初は拙い仕事しか出来なかったマーサが、成長してどんどん出来ることが増え、壁を乗り越えていくたくましい姿は実に爽快。クライマックスにかけてのマーサはまさに喝采を送りたくたるカッコ良さでした。

フランスのアニメといえば芸術性とか作家性至上主義の作品が多い、というイメージが私にはあるのですが、レミ・シャイエ作品はそんな事はない。『ロング・ウェイ・ノース』はかつての世界名作劇場の「母を訪ねて三千里」をよりアクティブにしたような作品でしたし、今作も「トム・ソーヤの冒険」のワクワク感・躍動感と「ペリーヌ物語」の感動を足したような作品。娯楽作品としてのエンターテイメント性はすばらしい。

ただ、欲を言えば、『ロング・ウェイ・ノース』は遭難した祖父を探す、『ペリーヌ物語』の場合はたった一人の肉親である祖父に会うためにフランスに向かう、というストーリーを貫くハッキリした目的がありましたが、本作にはそれがない。オレゴンに金持ちの肉親がいるとか、そこに着かないと決定的な危機に陥る!というような具体的な設定があればもっとお話が引き締まっただろうなぁ、とも思ったのですが…。
それが無いのは実在のマーサ・ジェーン・キャナリーという人物を扱った物語だから、史実に存在しない伏線は貼れなかったのでしょうね、おそらく。
その意味で、本作はマーサ・ジェーンという人物の人生をジェンダーというテーマに絡めて劇的に描く、という方向に少し傾きすぎているような印象もなくは無い。
アニメとしての娯楽性と実話を題材とする事の両立の難しさというものかなぁ、とも思います。
とはいえ、マーサはカッコイイ。
それで十分にこの映画のテーマは完遂しているようにも思います。
戦うヒロイン(この言い方が既にジェンダーハラスメントでしょうか)の勇姿を描く本作は小さなお子様にもおすすめだと思います。

映画『カラミティ』 | |
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監督 | レミ・シャイエ |
脚本 | サンドラ・トセロ ファブリス・ドゥ・コスティル レミ・シャイエ |
絵コンテ | マイリス・ヴァラッド リアン=チョー・ハン 他 |
作画・アニメーション | レミ・シャイエ リアン=チョー・ハン マイリス・ヴァラッド パトリス・スオウ ベンジャマン・マスーブル エディール・ノエル |
音楽 | フロレンシア・ディ・コンシリオ |
制作 | MAYBE MOVIES (フランス), NØRLUM (デンマーク) |
アニメーションスタジオ | 2 MINUTES, NØRLUM |
出演 | マーサ・ジェーン:サロメ・ヴルヴァン イーサン:サンティアゴ・バルバン アブラハム:ジョシェン・アゲル サムソン:アレクシス・トマシアン レナ:デリア・レジス エリージャ:マックス・ブリュネー イヴ:ビアンカ・トマシアン |
出演(日本語吹替え版) | マーサ・ジェーン:福山あさき イーサン:畠山航輔 アブラハム:杉田智和 サムソン:恵山渉一 レナ:松永あかね エリージャ:木野日菜 イヴ:木戸衣吹 |
配給 | リスキット |
上映時間 | 約1時間22分 |
本編上映時間 | 約1時間17分 |
クレジット上映時間 | 約5分 |
ポストクレジットシーン | 無し |
引用画像は「映画『カラミティ』予告編」「『CALAMITY(カラミティ)』日本語字幕版予告編」より
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