
東日本大震災より10年になる2021年の、8月27日より全国で公開。
ややストーリー展開にやや難があったものの…、何というか、原作は素晴らしかった。…だから、良かった!
本作の概要
あらすじ
ある事情で家を出てきた17歳のユイと、両親を事故で亡くしたショックで声を失った8歳のひより。
公式ホームページより
居場所を失った二人は、ふしぎなおばあちゃん・キワさんと出会い、海を見下ろす岬に建つ、ふしぎな古民家“マヨイガ”に住むことに。
なりゆきでキワさんについて来てしまった二人だったが、訪れた人をもてなす伝説の家“マヨイガ”、そしてキワさんの温もりに触れ、それぞれ傷ついた心は次第に解きほぐされていく。
付け加えると…
ユイは家出中、ひよりは親戚の家に引き取られようとするタイミングで東日本大震災に被災。二人とキワおばあちゃんは避難所で知り合う。
それを機に三人の共同生活が始まるが、実はキワさんには「ふしぎっと」と呼ぶ不思議な生き物と通じる能力があり…、ユイとひよりは「ふしぎっと」との触れ合いの中で自分を取り戻して行く。

震災から10年となる2021年に、フジテレビによる東日本大震災の長期的な被災地復興支援策として立ち上げられた『ずっとおうえん。プロジェクト 2011+10…』。この一環として制作された作品。
原作は柏葉幸子さんによる児童文学『岬のマヨイガ』。
岩手県の地元紙岩手日報の「日報ジュニアウィークリー」紙面に掲載された連載小説。
2016年に第54回野間児童文芸賞を受賞。
おおまかな感想
原作読了で、都内にて鑑賞しました。
柏葉幸子さんによる原作は、児童文学として凄く良かった。

東日本大震災をひとつの舞台として、人間を蝕む不幸や畏れの正体は何なのかという事に迫ろうとしているし、現実が過酷なら逃げてもかまわない、迎え入れてくれる場所、救いは必ずあるというメッセージに溢れている。そこに惹かれました。
私が特に印象に残っているシーンは、物語の終盤、強大な敵を前に足がすくんで動けなくなってしまったひよりのシーン。

絶体絶命のピンチに「土や木や草や花やひよりたちのマヨイガの」風の声がひよりに語りかける。
『お前は、ここの子だ。この土地の子になったんだ。おれたちが味方だ。怖がるんじゃない。何してる。早く行け!』
柏葉幸子著『岬のマヨイガ』より
この言葉に勇気づけられ、ひよりは困難に立ち向かおうとする。
「居場所」を失い、狐崎のマヨイガにたどり着いてもいまだ悲しみは癒えず言葉を失ったままのひより。そのひよりにまたしても襲った大きな苦しみのさ中にかけられた言葉。
それはひより達が暮らす東北という風土を形作る大自然の声。「ふしぎっと」たちの声。
風土は、そこに暮らす人々を見捨てはせず、受け入れてくれる。それに気づけば人は自然を味方につけ、力にする事も出来るのだと言われているようで、私自身も励まされているような気になってしまいました。
そんな勇気を読者である子供に与えられるのであれば、この『岬のマヨイガ』は本当に名作なのではないか…と思ったのであります。
んで、この原作を映画化するのであれば、これは期待せねばなるまい、と思いつつ見てきたのですが…。
原作の持つメッセージはアニメからも伝わりました。ユイ・ひよりと、キワさんが支え合いながら、困難を乗り越えようとする戦いは見ていて感動的でした。

芦田愛菜さん、大竹しのぶさん、サンドイッチマンさんをはじめとする声優さんたちの演技は自然で違和感もなく、すごく良かった。
特に大竹しのぶさんのキワさんの演技。

老婆の声がなんだかぴったりハマっていて、今まで見た大竹しのぶさんの声の演技の出演作の中では一番違和感がなかった。老け役が意外と合っているのか…?
全体として、作画、音楽、各要素とも良かったと思うのですが、ただし、シナリオは…。
おそらく時間的な制約が原因かと思いますが、かなり原作をはしょっているところが目立ちました。
「ふしぎっと」と、ユイとひよりとの関係が曖昧になっていたり、ラスボスである「アガメ」に関してのエピソードをカットしたり、どういう訳か一番重要だと思う部分に限ってカットが多い。

「アガメ」に関しては、その誕生にまつわる伝承などがかなり丁寧に原作では語られているのですが、それがかなりの部分をカット。そのため敵の存在が捉えづらくなってしまっている。
原作での「ふしぎっと」たちはひよりたちに示唆を与え、友達にもなる重要なパートナーなのですが、映画版ではそういった絡みはあまり無く、その役目はすべてキワさんが担う展開になっている。ひより・ユイたちとキワさんの関係だけでストーリーが成立するようになっていて、ちょっと「ふしぎっと」たちの存在感は薄い。

…という、やや不満に思うところもあったのですが、作品そのものの価値が損なわれているわけではないので…。この映画のもう一つのテーマである「震災から10年」という被災地支援の取り組みの意義は心に留めておくべきかもしれません。
原作を未読の方は、この映画を見たうえで原作も併せて読まれるのがおすすめではなかろうかと思います。
コロナ禍の中、気軽に東北に行くという事も出来ませんが、東北の自然、わたしたちの周りにいる「ふしぎっと」たちに想いをはせながら、今もっとも必要とされている〝生きる勇気″を分けてもらえるのではないでしょうか。

映画『岬のマヨイガ』 | |
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監督 | 川面真也 |
原作 | 柏葉幸子 「岬のマヨイガ」(講談社 刊) |
脚本 | 吉田玲子 |
絵コンテ | 川面真也 |
キャラクター原案 | 賀茂川 |
ふしぎっとキャラクター原案 | 丹治 匠 |
キャラクターデザイン・総作画監督 | 清水 洋 |
美術監督 | 畠山佑貴 |
音楽 | 宮内優里 |
出演 | 芦田愛菜 粟野咲莉 伊達みきお 富澤たけし 達増拓也 桑島法子 大竹しのぶ |
主題歌 | 「マヨイガ」羊文学 |
配給 | アニプレックス |
上映時間 | 約1時間45分 |
本編上映時間 | 約1時間40分 |
クレジット上映時間 | 約5分 |
ポストクレジットシーン | 無し |
ノベライズ三種
原作をノベライズと呼ぶのは違うかも知れませんが、この作品、原作を含めるとノベライズが三種類も出ています。
お好みに合わせてチョイスするのもいいかもしれません。一番のおすすめは原作ですが。

『岬のマヨイガ』
文:柏葉幸子 出版社:講談社 発売日:2015/9/11
ページ数:274ページ サイズ:単行本(菊判)
ISBN-10 : 4062832356
ISBN-13 : 978-4062832359
定価:1500円(税別)
原作では、やや設定が映画版とは違う。
ユイは、夫のDVのために家から逃れ、着の身着のままでたどり着いた狐崎で東日本大震災に被災した、年齢はおそらく30歳代ぐらいの主婦。通称「ユイママ」。
ひよりは、両親が事故で死亡し、伯父夫婦に引き取られるために狐崎にやってきた時に被災したという設定。伯父は震災のために死亡はしていない。
避難所で偶然一緒になったキワさん、ユイママ、ひよりという三世代が共同生活を始めるという、言わば疑似家族の成立。カンヌのパルムドール映画『万引き家族』のテーマともちょっと似ているという側面があります。そういう読み方も面白いかも。
挿絵はさいとうゆきこさん。緻密で独特のタッチが、ふしぎっとやアガメなどの異界の物の怪が飛び交う作品の雰囲気と合っています。


『岬のマヨイガ 映画ノベライズ』(講談社 青い鳥文庫)
文:森川成美 原作:柏葉幸子 脚本:吉田玲子 出版社:講談社
発売日 : 2021/8/4 ページ数:224ページ サイズ:新書
ISBN-10:4065246288
ISBN-13:978-4065246283
定価:680円(税別)
森川成美さんは児童文学で多数文学賞受賞歴を持つ作家さん。
内容は、ほぼ映画のシナリオを文章化したもの。特にノベライズ版独自のアレンジは無し。
児童向けの青い鳥文庫という事で文章は小学生向けで読みやすい。

『小説 劇場版アニメ 岬のマヨイガ』
文:吉田玲子 原作:柏葉幸子 出版社:講談社
発売日:2021/8/4 ページ数:194ページ サイズ:単行本(四六判)
ISBN-10 : 4065237033
ISBN-13 : 978-4065237038
定価:1300円(税別)
映画版の脚本を務めた吉田玲子さんによるノベライズ。
〝小説〟と銘打たれてはいるのですが…、小説っぽいのは物語の最初、冒頭の一文、
生きていくのは迷路の中を進んでいくようなものなのかもしれない。
見知らぬ土地を歩きながら、ユイはそう思った。高い壁に囲まれた道を迷いながら前へと足を動かす。先は見えない。後戻りはできない。それでも進んでいかなければならない。
という箇所と、文体がですます調ではなくなっている事ぐらいで、あとは青い鳥文庫版と内容はほとんど変わりません。
引用画像はすべて、「映画『岬のマヨイガ』本予告映像」「映画」『岬のマヨイガ』公開直前予告」より
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原作も映画も全く知りませんでしたが、ケンイチ探偵さんの感想を読んで、非常に興味が湧きました!
『今もっとも必要とされている〝生きる勇気″』、まさにその通りですね。
原作も映画も、観てみようと思います!