今でも売ってるんですね、ビニールのテープにパチンパチンとアルファベットを打刻するテープライター……(私が子供のころ、我が家ではよく使ってた)
「サンダーバード」、気高く美しい響き…。いいですね~。
私が子供の頃は、夕方によく再放送されていたのでちょくちょく見ていましたが‥、80年代・90年代頃です。
あの当時で既に制作から20年ほど経過していて、レトロフューチャー的な雰囲気を醸していた本作。ロボットアニメ全盛の時代の中、モビルスーツやスーパーロボットが出るわけではなく、宇宙からの侵略者が出るわけでもない、さらには人形劇でハードなSF世界を描くという「サンダーバード」は、若干、ですが私には特殊で本格派志向の玄人向け作品というイメージがありました。
そんなイメージもあったのでずっと「サンダーバード」は敬遠気味。初めて通して全てのエピソードを視聴したのは数年前でした。
じっくり見て思ったのは、リアルさへのこだわり。
メカの描写や細かいギミックの動きの緻密さは驚異的。人形劇で人間はデフォルメされているけど細部のリアルさはとことんこだわる。
サンダーバード1号や2号といったメカの洗練されたデザインや、その運用の発想の先進さ。搭乗シーンひとつ見ても如何に後の日本のロボットアニメや特撮に大きな影響を与えたか良くわかる。
昔、ドラマの「踊る!大捜査線!!」(タイトルうろ覚え)がブームになった時、ヒットの要因のひとつは「基本的な設定や世界観は大いに非現実的であっても、細かい細部は非常にリアルに描いている点」にある、という話を聞いた覚えがあります。その意味では『サンダーバード』は優れたエンターテイメント作品としての要素を備えた元祖の作品と言えるかも。
リアリズムに徹しているからこそ「人命救助」というテーマがより身近に見え、意義が明確になるのであろうし、それがカッコイイ。
出てくる登場人物も皆キャラが立っていて魅力的。トレーシー五兄弟も五人それぞれの性格の違いがカワイイし、レディペネローペと執事パーカーのコンビもユーモラスで見ていて飽きない。
特に、日本版に限ったことですが声の出演のペネローペ役、黒柳徹子さんの存在感も凄い。
上流階級のレディとしての気品も持ちつつ、少女のような無邪気さも感じる。声の演技でここまでの表現力というのは凄い。
「徹子の部屋」で司会業を始めたのを機に俳優活動はセーブするようになったそうですが、演者としての活動を良く知らない私としては、俳優「黒柳徹子」とはどんな人だったのかと大変興味を惹かれました。
そんな『サンダーバード』の新作映画が公開される、という事で見てきました。
2021年1月8日より全国映画館で公開。9日からは Amazon prime video で二日間レンタル¥1900で配信中。
映像の違和感というものが全く無いのが凄かった。
小道具一つとっても妥協ナシ。CGは使わず、すべてアナログの手法で撮影するというこだわりはまさに『サンダーバード』のスピリットそのものであろうと思います。
元々は1960年台に発売された音声ドラマアルバム三本を映像化したもの。レコードで残っていたため、当時と全く同じオリジナルキャストとBGMで映像化出来たということが本作の肝。
50周年を記念してクラウドファンディングで集められた資金を元に映像化された三作品を、ひとつにまとめて日本公開の映画作品としたのが『日本語劇場版 サンダーバード55/GOGO』。
しかし、音声ドラマとしての性質上か、レギュラー放送の特撮の派手さ、ストーリー的な華やかさにはやや欠ける印象はあります(あのころ雑誌のオマケとかでよくあったソノシートみたいな感じ?)。
あくまでも50周年を記念したファン向け、マニア向けの作品という雰囲気は否めず。
それを補うため、解説映像がインサートされたり、吹替に俳優の満島ひかりさんや井上和彦さん、立木文彦さんといった声優の大御所を起用したりもしている。
ちょっと大御所オンパレードでキャスティングに意外性が欠けるというか何と言うか…、さらに、そうなってしまうとオリジナルを忠実に現代に蘇らせたという本作の趣旨からはやや外れてしまっているのもまた事実で…、難しいですね、映画の企画を成立させるのって。
ストーリーはまさに『サンダーバード』らしさに溢れています。前述したようにサンダーバードのスピリッツそのものを体感できます。
サンダーバードを良く知らない人に向けての解説もあり、万人向けの作品としての体裁は整っています。これを機にサンダーバードに初めて触れる人が増えてくれるとうれしい。
でも、圧倒的にファンにとって楽しい映画なのは間違いないですが。
各エピソード
Episode 1: サンダーバード登場
国際救助隊が本格始動する前のお話。ペネロープがトレーシー島を訪れ、ジェフから島内隅々の国際救助隊の施設の説明を受けるお話。トレーシー島の施設の外を歩き回るシーンが出るのはこれが初めてなのだとか。ペネロープとジェフの関係性も垣間見えるので、ファン必見エピソード。
Episode 2: 雪男の恐怖
お馴染みフッド登場エピソード。内容はちょっと『キングコングの逆襲』に似ている。陰謀めいたストーリーはまさに「サンダーバード」。
Episode 3: 大豪邸、襲撃
イギリスのセレブが所有する財宝が盗まれ、邸宅が爆破される強盗事件が多発。自身も狙われたペネロープが真相の究明に乗り出す。イギリスの長い歴史も絡む、ヨーロッパらしさが興味深いサスペンス。
三話すべてにペネロープ、パーカーが絡んでくるのは個人的にうれしい限り。
特典
映画版では、「サンダーバード55/GOGO」のスタッフによって制作された新作スーパーマリオネーション作品『ネビュラ75特別編』が同時上映として公開される。
Amazon prime videoでの配信版には、制作スタッフのインタビューを中心とした約30分間のメイキング映像あり。強いて言えば…、どちらかというとメイキング映像のほうが見ごたえあり。
引用画像はすべてAmazon prime video配信版「サンダーバード55/GOGO」より