都内映画館にて鑑賞しました。
非常に丁寧に、堅実に作り込まれていて大変面白かったです。
今年は極力、公開されるオリジナルのアニメ映画は見るようにしていました。
その中には、…例えばですけど「あの親子は一体何者だったんだ?」とか、「もうちょっとCGにお金をかけていれば…」とか、「見た目は清涼飲料水のように爽やかだけど、言い方を変えると青春のシビアさ皆無でほのぼのし過ぎ?」等々…。
様々なアニメ映画には様々な感想、あまりいい意味ではない色々な引っかかりを感じたものもあったのですが、この作品に関しては見終わって「?」とギモンに感じるところとか、引っかかる部分が殆ど無かった。
細かい点でいえばストーリー展開にご都合主義的に見えるところもありましたが、それは枝葉の部分。全体的なシナリオそのものはセオリーに則って非常に堅実に作られていると感じました。
登場していきなりサトミは幸せかと熱唱するシオン。つかみはバッチリ。
そのシオンのハチャメチャさに周りは振り回されつつも、それが皆の人としての繋がりに結びついていく。環境の劇的な変化。
うまく行きつつあるかと思いきや事態は急変、そこで皆で力を合わせ…。
主人公のサトミにはシオンの秘密を守る理由があるし、シオンの行動にも明確な理由がある。その伏線が明かされていく展開は感動的であります。
ただ、この作品、テーマはミュージカルとAI。
AIということに関しては、監督である吉浦康裕さんのデビュー作である『イヴの時間』のテーマである、〝ロボットと人間の関係″という事から、社会的な視点も加わって大きく深化しているのはスゴイと感じました。
しかし「ミュージカル」要素はどちらかというと…、完全に作品にフィットしているかというと、若干、ちょっとだけ疑問はありました。
ミュージカル映画…というより音楽映画と言った方がイイのかも知れませんが、私が一番好きな音楽映画は『ブルース・ブラザーズ』でして…、あの作品には全編にわたって「歌」や「音楽」に対する深いリスペクトや愛情を感じるのが大好きなのです。
『アイの歌声を聴かせて』は何というか、そういう境地には至っていないようにも見えます。そこがやや、映画的な華々しさや突き抜けた魅力をぼやけさせているかも…とも思いました。
ただし、歌・ミュージカルという要素はかなり綿密な設定や仕掛けの上に成り立っているようなので(劇中アニメの「ムーンプリンセス」の設定など)、そこまで求めるのは贅沢なのかもしれませんが。
とはいえ、作画も安定して素晴らしいですし、土屋太鳳さんをはじめとする声優さんの演技も同じく素晴らしい。『竜とそばかすの姫』みたいに今だにロングラン上映をしているような超大作は別格として、今年見たアニメ映画ではナンバーワンの良作だと思います。