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2023年10月28日 0
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「彼女と働けるなら、」……『北極百貨店のコンシェルジュさん』見ました【映画雑感】

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2023年10月20日より 全国公開

映画「北極百貨店のコンシェルジュさん」見ました【映画の雑感日記】

新人コンシェルジュとして秋乃が働き始めた「北極百貨店」は、来店されるお客様が全て動物という不思議な百貨店。

一人前のコンシェルジュとなるべく、
フロアマネージャーや先輩コンシェルジュに見守られながら日々奮闘する秋乃の前には、あらゆるお悩みを抱えたお客様が現れます。
中でも<絶滅種>である“V.I.A”(ベリー・インポータント・アニマル)のお客様は一癖も二癖もある個性派ぞろい。…

公式ホームページ「STORY」より

…この個性的なキャラクター達を相手に奮闘する秋乃さんの物語。
原作は 西村ツチカ著『北極百貨店のコンシェルジュさん』全二巻。
原作を読んでから、映画版を鑑賞しました。

西村ツチカ著『北極百貨店のコンシェルジュさん』 小学館 ビッグコミックススペシャル刊

原作はややクセ強めの作品でした。なので、作者の西村ツチカさんはどういう作風の漫画家さんなのかと思い、他の作品もいくつか読んでみました。

渇いたタッチでありながらも温かみのあるデザイン。日常であったり、人間の感情の刹那を切り出して、「これっておかしくない?」とか、「こういうのって面白くない?」というような、イマジネーションを通して人間の本質を写し出し…、それが詩的であったり

西村ツチカ著 「西村ツチカ作品集 なかよし団の冒険」「窓」より

演劇的であったりする、感性が全面に出る作風。

西村ツチカ著 「かわいそうな真弓さん」より

やや、娯楽よりは作家性、前衛的というほどではないにしても、マニアック的というか、知る人ぞ知るというか、そういう作品群に見えました。

それをふまえて、改めてこの「北極百貨店のコンシェルジュさん」を見てみると、それまでの作品とは別モノといっても良いぐらい、すごくとっつきやすく親しみやすい娯楽作品なのだな、というのがわかりました。
ジャンルとしては典型的なお仕事もので、北極百貨店を訪れる動物お客さんのリクエストに答えようと奮闘する主人公の秋乃さん、一人前のコンシェルジュになるための接客のノウハウ、極意が次々と現れる展開は興味深いし、引き込まれました。

『北極百貨店のコンシェルジュさん①』より

ニンゲンの客が相手では、中高年読者向けの完全リアル指向の作品になるのでしょうが、擬人化された動物では全く別の魅力が生まれる。秋乃さんの朗らかさとも相まって、見ていて癒やされるものがありました。

その一方で物語のテーマはややシビア、にも見えました。ディズニー作品の『ズートピア』は擬人化された動物キャラで人間社会の多様性が表現されていましたが、こちらは地球生命の多様性で人間の欲望の果てしなさ、度し難さが表現されている。

『北極百貨店のコンシェルジュさん②』より

人間の欲望、大量消費の対象として絶滅させられた動物たちが「V.I.A」となり、二本足で立ち人間の格好をして、欲望・消費社会の精華ともいえる百貨店に訪れ、人間は召使いとしてサービスする…。

きらびやかな百貨店の虚飾に潜むアイロニーというか哀愁というか、「そういうのってどうなの?」「そんなことになったら面白いんじゃない?」という作者西村ツチカさんのイマジネーションが爆発しているようにも感じました。

個人的に、かつて大型百貨店の薄暗い片隅で働きながら強烈にまぶしい売り場を眺めておぼえた不条理な感覚が漫画を描く大きな動機でしたが、華やかな本作を観てその初心を思い出し、大きな刺激をいただきました。
どうもありがとうございます!

パンフレット 原作 西村ツチカさんの「COMMENT」より抜粋

そもそも「北極百貨店」とは動物たちへの贖罪なのか奉仕なのか開き直りなのか、誰がつくったのか、何処にあるのか、何故動物たちは二本足で立ち人語を話すのか、実在する世界の話なのか…このあたりの設定は色々ありそうですが、詳細はナゾのまま終わる。
あくまでも作者西村ツチカさんのイマジネーションや作家性の暗喩として「北極百貨店」は存在しているのであって、細かい事はどうでもイイのかも。

さらに、ストーリー的にも特に目的やド派手なオチがあるわけでもない。で、あっても見ていて違和感も不満も覚えないのは、滅びゆく世界と秋乃さんのやさしさ、そこから希望を見出そうかという気分になる、そんな西村ツチカ作品のスローライフ的世界、絵柄などのビジュアルも含めてトータルでの世界観の確かさがそうさせているのだろうなぁ…と思うのであります。

『北極百貨店のコンシェルジュさん②』より

映画版は、その原作の良さを忠実に表現していると思いました。
作画も良いですし、声優さんの演技も良い。

ただ、強いて不満を言うなら、この作品は秋乃さんの成長、そして世界観を楽しむものではなかろうかと私は思うので…、そういう意味では上映時間がやや短かった(上映時間70分)。世界に浸るとか、秋乃さんに感情移入し切る前に終わってしまった感じ。
もう少しじっくりと北極百貨店の絢爛豪華の世界を見ていたかった。やはり90分ぐらいあれば…、そこだけが不満です。

とはいえ、シナリオ自体は本当に必要なエピソードだけを厳選して選んで、かなりコンパクトにまとめられていると思います。

『北極百貨店のコンシェルジュさん②』より

引用画像は 公式YouTubeチャンネル『アニプレックス チャンネル』内「映画『北極百貨店のコンシェルジュさん』本PV 2023年10月20日(金)公開!」より

北極百貨店のコンシェルジュさん 西村ツチカ

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