2023年は「愛しのクノール」「オオカミの家」という意欲的パペットアニメーション二作を見ました。
さらにそれを締めくくるがごとく、あの「ムーミン」のパペットアニメーション作品が年末12月29日から公開になると聞き、私の中でのパペット三部作のオーラスを飾る感覚で見に行きました(見たのは24‘ 年明けでしたが)。
ムーミンといえば、私は岸田今日子さんが声の主演をしていた「昭和ムーミン」の印象が強いのですが、ヨーロッパではかなりの数のムーミン映像化作品が制作されていると初めて知りました。
ドイツで制作されたアニメ版とか、ポーランドで制作されたパペットアニメーション版とか、それをデジタルリマスター化して再編集した劇場版とか、フィンランドで制作されたアニメ劇場版とか。
色々あるんですね…知らなかった。
今回公開されたのは、本場フィンランドで制作された完全新作。
新作オリジナルとなれば、何かしら革新的というか現代的な要素というものがふんだんに表現されているのか?というイメージもありましたが…。
みなしごホームで育った若いムーミンパパはある日、思い立ってホームを抜け出して冒険に出る。若いムーミンパパは道すがら、発明家のフレドリクソン、ガラクタばかり集めて いつもあたふたしているロッドユール(スニフの父親)と出合い、意気投合。
公式ホームページ「SUTORY」より
フレドリクソンは新たに完成した「海のオーケストラ号」という船を皆にお披露目する。船に乗り込んでみると、中には勝手に船に忍び込んだ、気ままなヨクサル(スナフキンの父親)も。竜のエドワードの助けもあって、楽しい仲間たちは大航海へ出発する。
実際見てみると本当に素朴なアニメで、いわゆる日本の「昭和ムーミン」のイメージで見るとまるっきり別物の作品のように見えるので面食らいそう。
日本の作品で例えるなら、アニメそのものは「昭和ムーミン」というよりも「日本昔ばなし」に近いカンジ。
ピョコピョコとしたキャラクター動作はアクション性よりもハンドメイド的な魅力に溢れているし、ストーリーは淡々と、何となく見ているとまるで脈絡のない話の連鎖のようで、「古事記」のような大昔の神話とか、民話を読んでいるかのごとき感覚に陥る。
色々な伏線や暗喩があって奥が深く、原作者のトーベ・ヤンソンの表現する「ムーミン」とは、こういう世界だったのかと思い知らされました。
秩序立った45度の尻尾よりも現状打破、既成概念の否定、金色の尻尾、それは冒険、そして得られるもの、見つけられるものは大切な仲間、パートナー。
それは〝始まり〟だった。
最初、私には淡々としているように見えたストーリー展開も、良く思い返してみるとドラゴンが出てきたりオバケが出てきたり、みんな大嵐にもみくちゃにされたり結構ハード。
そして、思春期的な悩みをかかえるムーミン・トロールに対するママ・パパの愛情と希望にあふれる語りかけが、見ていておだやかな気分になりました。
息子よ、冒険が待ち受けているぞ。
劇中のパパの台詞より
冒険で賢くなるかはわからんが、自分の能力に驚く日が必ず来るのだ。
私も、パパの言葉を信じたいものです。
引用画像は公式ホームページより