新時代、生きる意味、オペラショーでプチョヘンザ!「劇場版『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』」見ました。【映画の雑感日記】
INTRODUCTION
「ウマ娘」──彼女たちは走るために生まれてきた。
『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』 公式サイトより
ときに数奇で、ときに輝かしい歴史を持つ別世界の名前と共に生まれ、
その魂を受け継いで走る。瞳の先にあるゴールだけを目指して──。
先日、「劇場版『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』」見ました。
私自身競馬はムチャクチャに詳しいわけではなく、たまに競馬場に行ったりはしますが、ゲームの「ウマ娘 プリティーダービー」は課金沼が怖くて未プレイ(アニメ版はほぼすべて見てます)。ただ、昔からシミュレーションゲームの「ダービースタリオン」等は大好きで、今でもたまにプレイします。
苦労して育てた馬が重賞制覇したときの達成感は格別。私は『ダビスタ』攻略の難易度を通して、競走馬の世界の厳しさを知ったのであります。
とにかくゲーム開始直後に生まれるのは走らない馬ばかり。資金の枯渇を恐れつつ世代を何度か重ねるなかでようやく重賞でも勝ち負けのできる馬が生まれ始め、遂にはG1勝利に至る。
ゲームなら、堅実にプレイしていけばコンスタントにオープン馬を生産できるようになりますが、しかし、現実はどうなのかと想像したりもします。
そもそも、重賞のグレードレースに出走できる最上位クラスであるオープンクラス馬になるには、古馬であれば4勝を上げなくてはならない。
たかが四勝、されど四勝。
年間7000頭ほどのサラブレッドが誕生する中、中央競馬での新馬戦、未勝利戦レース数は1400レースほど。
未勝利戦は3歳馬までしか出走できないから、未勝利戦がなくなる3歳の秋までに1勝も上げられない馬はそれ以降、出走できるレースがほとんど無くなってしまう。
そうなると地方競馬に移籍するか、引退しか道は残されていない。中央競馬でレースを続けられるのは、単純計算で7000頭のうち1400頭ほど、約2割の馬しか生き残れない。
それは、競走馬がレースで1勝するだけでもそれはどえらい事。ましてや4勝、さらにG1勝利などということは「たかが」でも「されど」でもない、もはや『異常』と言っても良いハイレベルな世界なのだという事を痛感するのであります。
そして、サラブレッドは速く走るためだけに人間によって品種改良された動物。
走るためだけに、勝つ事だけが生きる意味。その目標を達成するために植え付けられた凄まじい闘争心、肉体美。
一体何故、サラブレッド達は走るのか。脚を一本骨折しても生命維持に支障をきたすギリギリのバランスと、途方もないハイレベルな競争の世界の中で、そのゴールの先に何を見出しているのか。
そこにはいろんな人たちの想いを重ね合わせる事ができる。その独特なサラブレッドの世界観に人は惹きつけられるのではないでしょうか。
ウマ娘プリティーダービーは、そんなサラブレッドの本質に鋭く切り込んでいるのではないかと私は思います。
何故ウマ娘達は走り続けるのか。それは、
うまだっち!
だから、
きみとかちたい!
そして、
もっと先まで!
走れ!終わらない夢の中!
考えてもみれば、サイレンススズカもトカイテイオーもメジロマックイーンもナリタトップロードも…、出てくるキャラクターは皆、自らが走る意味を自問自答していた。
特に、2023年4月にYouTubeで公開された『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』はそのあたりのテーマがより鮮明になり、それをふまえての劇場版『新時代の扉』ではなお一層、ウマ娘・競走馬というものの本質に迫る、ひとつの頂点に達した作品のようにも私には見えました。
それが象徴的に表れていると思ったのが、劇場版らしい大迫力でハイレベルな作画。
競走馬の世界の本質をビジュアル面でも表現している。
汎用人型決戦兵器が暴走を起こしたようなウマ娘達のレース中の表情、とめどなく流れる汗、体から立ち上る湯気、ピンピンにトンガリまくった鼻、エッジが効いているというか何というか、デザインにも作画にも勢いがあり…。
ここまでの迫力、リアリズム表現というものは今までのシリーズでは見たことが無かった。
より深化したテーマという意味で、劇場版は歴代ウマ娘作品の中でも最高傑作と言えるのではないでしょうか。
ただ、前述の通り私はダビスタやウィニングポストを通じてしか競馬を知らない人間なので…、ジャングルポケットの現役時代を私はリアルタイムでは見ていません。
ジャングルポケットの真価を知らないだけに、どうしてもお笑い芸人さんを連想してしまい、ややキャラクター的にピンと来ない部分もあります。
しかもトウカイテイオーのようなボクっ娘ならともかく、それを超越しての一人称「オレっ娘」というのも、やや私の趣味には合わない。
ただ脇を固めるキャラ、イマジナリー「マンハッタンカフェ」や、マッドサイエンティスト「アグネスタキオン」、ギガントナルシスト「テイエムオペラオー」と、現実とか自分自身を見ているのかいないのかも良くわからない○〇ガイ一歩手前のような個性的キャラクターばかりなので、バランスが取れていると言える…かも。
そう、私の趣味など凌駕する完成度の高さが、「劇場版『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』」にはあると思います。
「劇場版『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』」あらすじ
自由気ままなフリースタイル・レースで、最強を目指して走り続けてきたウマ娘の少女、ポッケことジャングルポケット。
気まぐれに観戦した<トゥインクル・シリーズ>のレースで、フジキセキの走りに衝撃を受けたポッケは、自らも<トゥインクル・シリーズ>に挑むことを決意する。ウマ娘たちの集う『トレセン学園』に入ったポッケは、フジキセキを育てたタナベトレーナーのもと、一生に一度しか挑戦を許されない『クラシック三冠レース』に挑む。
そこに待ち受けていたのは、ポッケをもしのぐ実力をもつ同世代のライバルたちだった。ひたむきな思いを胸に実直に努力を続ける、ダンツフレーム。
自分にしか見えない『お友だち』を追いかけて走る、マンハッタンカフェ。
そして、ウマ娘の可能性のその先を求めるマッドサイエンティスト、アグネスタキオン──自らの誇りと、意地と、魂をかけて走るウマ娘たち。
熱く激しいその戦いが、新たな時代の扉を開く。「誰が相手でも関係ねえ! 俺は最強のウマ娘になってみせるぜ!!」
劇場版『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』 公式サイトより
引用画像は、公式YouTubeチャンネル『東宝MOVIEチャンネル』内 劇場版「『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』予告【5月24日(金)公開】」より