ケンイチ探偵 感想倶楽部
  • HOME
  • 全ての投稿記事
2022年6月3日 1
レビュー記事, 感想記事, 漫画の感想, 漫画本レビュー

藤子・F・不二雄短編作品「カイケツ小池さん」レビュー 【漫画本レビュー】

藤子・F・不二雄短編作品「カイケツ小池さん」レビュー 【漫画本レビュー】
2022年6月3日 1
レビュー記事, 感想記事, 漫画の感想, 漫画本レビュー

藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>(1)ミノタウロスの皿 に収録されている「カイケツ小池さん」の感想です。

4「カイケツ小池さん」の感想

1970年4月25日号ビッグコミックに掲載された作品。
常日頃から社会の不正への義憤にあふれつつも、それを正せない自らの非力を嘆く正義漢〝小池さん″に、ある日突然訪れた奇跡。その悲劇の物語のプロローグ。

『スーパーさん』に続くスーパーマンもの作品。こちらは掲載誌がビッグコミックだけに、内容は社会性が増して、絵柄もちょっとだけリアル寄りな印象。

「正義」の実現を意識しつつも、突然超人的な力を得た人間の混乱や騒動をコミカルに描くのは『スーパーさん』と同じですが、テーマ的に違うのは「正義」というもののあやふやさ、危険さが描かれている点。

常日頃から社会の不正に怒り、それを正せない自分の非力さを責める。自分の弱さをごまかすように正義感が肥大化していく小池さん。

こういうことは誰しもあることではないでしょうか。「社会が悪い」、「政治が悪い」、「時代が悪い」、というのはひょっとすると自分の弱さを隠しているだけなのかも知れないし、逆に言うとココロの安定を保つために必要なことかも知れない。

しかしそんな平凡、かつオサラバしたい日常をすべて覆し、自分の考える理想を実現させるほどの力をある日、前ぶれも無く突然得てしまった小池さん。

小池さんはどうなってしまうのか。

小池さんの力は本当に万能。
透視は出来る、空を飛べる、力は無限、自分の意志で他人の命をあやつる事もできる。

まさに『DEATH NOTE』の先駆け、元祖ではないですか!

大場つぐみ(原作)小畑健(作画)集英社刊『DEATH NOTE』より

この『カイケツ小池さん』では、その超能力に右往左往する小池さんがコミカル、かつブラックに描かれる。小池さんの考える正義が、どんどん自分を正当化することだけにすり替わっていく様は空恐ろしいものがあります。

この作品はそういった正義のあやふやさを暗示しながら、小市民的な小池さんの様子の面白さを描くところでやや尻切れトンボ的な終わり方をしている。ただ、この続編にあたる『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』では、この後の小池さんが自らの力を介して社会に対しどのように振舞ったかが事細かに描かれる。

1976年1月号「SFマガジン」掲載作品 (SF短編<PERFECT版>3巻に収録)

『カイケツ小池さん』と『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』掲載の間には6年ものインターバルがあるので(『ウルトラ~』は1976年の作品)、最初から続編の執筆を前提にされていたのかは良くわかりませんが、『カイケツ~』で描き切れなかったテーマを『ウルトラ~』ではより深く表現されています。

何というか『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』と合わせて読むと、小池さんはどこで何を間違ったのだろうか、人間は非力なままが幸せなのか、正義とは何なのかといろいろ考えてしまいます。

『カイケツ小池さん』だけでは多少分かりづらさがあるのですが、『ウルトラ~』をふまえて読むと小池さんの変遷というものが良くわかる。そういう読み方がおすすめかと思います。

引用画像はすべて「藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>」より


「藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>(1)ミノタウロスの皿」について

藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>(1)ミノタウロスの皿

藤子・F・不二雄のSF短編112話を全8巻に完全収録した“PERFECT版”が登場! 鋭い風刺精神を存分に発揮した「藤子美学の世界」にどっぷり浸かれる作品集!

Amazon.co.jp商品説明より

藤子・F・不二雄氏による短編の総集編。第一巻は1968年の「少女コミック」9月号に掲載された『スーパーさん』から1973年「ビッグコミック」4月10日号に掲載された『イヤなイヤなイヤな奴』までを年代順に収録。

巻末には藤子・F・不二雄氏の長女である藤本匡美さんによるエッセイ「こっそり愛読した父の作品」が掲載されています。

タイトル雑誌名年月号
スーパーさん少女コミック1968年9月号
ミノタウロスの皿ビッグコミック1969年10月10日号
ぼくの口ボット子供の光1970年1月号
カイケツ小池さんビッグコミック1970年4月25日号
ボノム=底ぬけさん=ビッグコミック1970年10月10日号
ドジ田ドジ郎の幸運SFマガジン1970年11月 増刊号
じじぬきビッグコミック1970年12月25日号
ヒョンヒョロSFマガジン1971年10月 増刊号
自分会議SFマガジン1972年2月号
わが子・スーパーマンビッグコミック1972年3月10日号
気楽に殺ろうよビッグコミック1972年5月10日号
アチタが見えるビッグコミック1972年8月25日号
換身SFマガジン1972年9月 増刊号
劇画・オバQビッグコミック1973年2月25日号
イヤなイヤなイヤな奴ビッグコミック1973年4月10日号
藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>(1)
筆者藤子・F・不二雄
発売日2000年07月25日
発行所株式会社 小学館
総ページ数362ページ
判型A5判 148✕210
ISBN-104091762018
ISBN-13978-4091762016
定価本体 1,980円(税込)
2022年 4月時点

カイケツ小池さん 藤子・F・不二雄 藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版> 藤子不二雄

前の記事マーベル映画みたいだった! 映画『シン・ウルトラマン』見ました【映画の雑感日記】次の記事 「ぷちっ」の衝撃 映画『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』レビュー

1 件のコメント

ピンバック: あいつとおれ、咲き誇れ喜劇のハレーション 藤子F短編作品「換身」【漫画本レビュー】 - ケンイチ探偵 感想倶楽部

コメントを残す コメントをキャンセル

コメントを投稿するにはログインしてください。

最近の投稿

  • 破滅の海を仲間と共に。新たな希望へ、再生の道 映画『Flow』鑑賞記【映画レビュー】 2025年4月15日
  • 人類の電気的希望か 巨大ロボが見る夢は「日本の巨大ロボット群像展」観覧記【日々の感想】 2025年3月10日
  • 大事なのは〝あいつとおれ〟 藤子F短編作品「換身」【漫画本レビュー】 2024年11月25日
  • クイズ「葬送のフリーレン展」旅する魔法ラリー!に挑戦【日々の感想】 2024年10月9日
  • 明日のために「アチタ」が来る 藤子F短編作品「アチタが見える」【漫画本レビュー】 2024年9月27日
  • 撮って楽し 箱の中身は何でしょう「葬送のフリーレン展」を見て来ました【日々の感想】 2024年9月1日
  • 愛をとりもどせ! 葬送のフリーレン キャラ当てクイズ スペシャルトークショー 【日々感想】 2024年7月4日
  • 言わずもがな アイドルほど素敵な商売はない!映画『トラペジウム』見ました【映画の雑感日記】 2024年6月20日

カテゴリー

アーカイブ

タグ

21エモン GUNDAM FACTORY YOKOHAMA SF THE GUNDAM BASE YOKOHAMA Satellite この世界の片隅に ずっとおうえん。プロジェクト 2011+10… オナベ ガンプラ ククルス・ドアンの島 サンシャインシティ サンシャインシティ噴水広場 スタジオジブリ スパイダーマン チンプイ トモエ学園 パペットアニメーション ピノッキオの冒険 プラモデル マーベル ミミック メイドインアビス メイドインアビス烈日の黄金郷 モンガー 人造人間キカイダー 動くガンダム 吾峠呼世晴 宇宙戦艦ヤマト 安彦良和 宮崎駿 小林宗作 新海誠 星を追う子ども 東日本大震災 機動戦士ガンダム 池袋 池袋サンシャインシティ 窓ぎわのトットちゃん 葬送のフリーレン 葬送のフリーレン展 ─冒険の終わりから始まる物語─ 藤子・F・不二雄 藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版> 藤子・F・不二雄大全集 藤子不二雄 鬼滅の刃 黒柳徹子
ケンイチ探偵 感想俱楽部
HOME | お問い合わせ | プライバシーポリシー

このサイトについて

世の中知らないことだらけ。
そんなケン一が、探偵となって世界の読み物、映画、出来事を調査・レビューする感想ブログであります。

キャラ紹介

サイト内検索

カテゴリー

最近の投稿

  • 破滅の海を仲間と共に。新たな希望へ、再生の道 映画『Flow』鑑賞記【映画レビュー】
  • 人類の電気的希望か 巨大ロボが見る夢は「日本の巨大ロボット群像展」観覧記【日々の感想】
  • 大事なのは〝あいつとおれ〟 藤子F短編作品「換身」【漫画本レビュー】
  • クイズ「葬送のフリーレン展」旅する魔法ラリー!に挑戦【日々の感想】
  • 明日のために「アチタ」が来る 藤子F短編作品「アチタが見える」【漫画本レビュー】

各お部屋メニュー

  • アニメの感想
  • プライバシーポリシー
  • 全ての投稿記事
  • 問い合わせフォーム
  • 折々のせりふ
  • 映画の感想
  • 漫画の感想
  • HOME
上にスクロール