藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>(1)ミノタウロスの皿
藤子・F・不二雄のSF短編112話を全8巻に完全収録した“PERFECT版”が登場! 鋭い風刺精神を存分に発揮した「藤子美学の世界」にどっぷり浸かれる作品集!
Amazon.co.jp商品説明より
おおまかな感想
言わずと知れた藤子・F・不二雄先生のSF短編。やはりその魅力はF先生の作風である「すこし ふしぎ(SF)」。
日常生活でのふしぎな出来事を描く、ミクロな視点でのSFというのは小松左京氏や星新一氏といった巨匠のSF短編の王道に通じるもの。科学あり、宇宙あり、SFの基本に忠実でありつつも同時に、いわゆる『藤子美学』と言えるF先生独自の視点はきっちり表現されている。その完成度の高さではないでしょうか。
第一巻は69年から73年までの作品を収録。年代順に掲載されているので、F先生のSF短編の作風の変化もとらえやすく、大全集よりもこちらの方がファンとしては面白いのではないか?とも思います。
そういうところが<PERFECT版>、ということでしょうか。
この第一巻を読んで感じるのは、傾向としてドラマ的な雰囲気で魅せる、というよりもナンセンスコメディとか大人向けのブラックユーモアテイストのシチュエーションで楽しませる作品が多い印象。象徴的なのは『スーパーさん』『カイケツ小池さん』『気楽に殺ろうよ』…といったところ。
全体としてみると、藤子F作品らしさが全面的に出ているというよりは、藤子F短編作品としての方向性を模索しているような…そういう雰囲気もあるにはあります。
とはいえ、藤子F短編の象徴ともいえる『ミノタウロスの皿』、のちのドラえもんの有名エピソード「ドラえもんだらけ」の元ネタといえる『自分会議』、どんでん返しSFとしても面白い『ヒョンヒョロ』、藤子F短編ファンなら見逃せない『劇画・オバQ』等、名作ぞろい。
初期作品ならではのパワフルさを感じます。
本書について
藤子・F・不二雄氏による短編の総集編。第一巻は1968年の「少女コミック」9月号に掲載された『スーパーさん』から1973年「ビッグコミック」4月10日号に掲載された『イヤなイヤなイヤな奴』までを年代順に収録。
巻末には藤子・F・不二雄氏の長女である藤本匡美さんによるエッセイ「こっそり愛読した父の作品」が掲載されています。
タイトル | 雑誌名 | 年月号 |
---|---|---|
スーパーさん | 少女コミック | 1968年9月号 |
ミノタウロスの皿 | ビッグコミック | 1969年10月10日号 |
ぼくの口ボット | 子供の光 | 1970年1月号 |
カイケツ小池さん | ビッグコミック | 1970年4月25日号 |
ボノム=底ぬけさん= | ビッグコミック | 1970年10月10日号 |
ドジ田ドジ郎の幸運 | SFマガジン | 1970年11月 増刊号 |
じじぬき | ビッグコミック | 1970年12月25日号 |
ヒョンヒョロ | SFマガジン | 1971年10月 増刊号 |
自分会議 | SFマガジン | 1972年2月号 |
わが子・スーパーマン | ビッグコミック | 1972年3月10日号 |
気楽に殺ろうよ | ビッグコミック | 1972年5月10日号 |
アチタが見える | ビッグコミック | 1972年8月25日号 |
換身 | SFマガジン | 1972年9月 増刊号 |
劇画・オバQ | ビッグコミック | 1973年2月25日号 |
イヤなイヤなイヤな奴 | ビッグコミック | 1973年4月10日号 |